アオジャコウアゲハ
学名:Battus philenor
- 分類:アゲハチョウ科
- 前翅長:4 – 5cm前後
- 時期:5 - 9月
- 分布:アメリカ合衆国南部
分類
アオジャコウアゲハはアゲハチョウ科に属しており、その中のアゲハチョウ亜科に分けられていてます。
アゲハチョウ亜科のアオジャコウアゲハ属に分けられています。
アオジャコウアゲハ属はウラベニアオジャコウアゲハ・ラオダマスアオジャコウアゲハなど多数存在します。
生態
1年を通じて数回発生を繰り返す多化性です。
生息域
フロリダ、ネブラスカ州、テキサス州、ニューメキシコ、アリゾナ、カリフォルニア、オレゴンなどの主にアメリカ合衆国南部に生息しています。
また、メキシコやコスタリカでも観測されています。
森林、草原、牧草地、庭などに生息しています。
成虫
アオジャコウアゲハは日中に活動し、アザミ、ツツジ、フロックス、ランタナなどの様々な花から吸蜜します。
オスは湿った砂や水辺で生殖のために必須なミネラルを補うために吸水します。
オスは頻繁に宿主植物であるウマノスズクサ科の植物に訪れて、メスを探します。メスを発見すると、オスはメスの上にホバリングし、オスがメスを上からフェロモンで扇動すると求愛が起こります。求愛が成功すると交尾します。
翅を開張すると7 – 13cm前後になる、中型の蝶です。
幼虫
成熟した幼虫の体色は黒色または赤色で、背側に黄色またはオレンジ色の突起が2列に並んでいます。側面に沿って短い黒い突起があります。疣足は黒色です。
テキサスやアリゾナなどの気温の高い地域では、全身が赤色の個体が多いようです。
頭部付近には黒色の二対の長い角があります。
食草はアリストロキア・セルペンタリアなどのウマノスズクサ科の植物を食べます。
ウマノスズクサ科の植物は毒性のあるアリストロキア酸を含み、幼虫時代にその葉を食べることによって、体内に毒を蓄えます。この毒は成虫になっても残り続けます。
毒を持つことによって、鳥などの捕食者から身を守っています。
成虫の見た目
アオジャコウアゲハは翅の表側の青色の金属的光沢と裏側の青く輝く後翅が特徴的です。
翅の表側は青色の金属光沢があり、後翅には小さな白い三日月模様が並んでいます。また短い尾状突起があります。
翅の裏側は前翅は黒色で白い小さな斑点が並んでいます。
後翅には外側に向かって青く輝く模様があります。大きいオレンジの斑点があり、斑点の周りは黒色で覆われています。縁には白色の斑点があります
胴体にも青色の金属的光沢があります。
上記の特徴は全てオスの特徴です。
メスは全体的に色が鈍く、翅の裏側の模様も控えめで青く輝く模様がありません。
多くの蝶の擬態モデル
アオジャコウアゲハは体内に毒性のあるアリストロキア酸を持つ毒蝶です。そのため、北アメリカ大陸の多くの蝶のベイツ擬態のモデルになっています。
毒を持つ生物で警戒色によって周囲に危険を知らせるものがいますが、それらの生物とは違う種が同じ警戒色を用いて、捕食されないようにする擬態をベイツ型擬態といいます。
アゲハチョウ科のアオジャコウアゲハに擬態する種類
例えば、トラフアゲハはメスのみアオジャコウアゲハの翅の裏側に似た模様をしています。
トラフアゲハのオスは全く擬態していません。メスだけが擬態しています。
また、アオジャコウアゲハの分布から外れた地域のトラフアゲハのメスは擬態していません。これはメスの黄色型と呼ばれ、見た目はオスとそっくりです。
他にもメスクロキアゲハ(学名:Papilio polyxenes)やクスノキアゲハ(学名:Papilio troilus)などがアオジャコウアゲハに擬態しています。
タテハチョウ科のアオジャコウアゲハに擬態する種類
タテハチョウ科の蝶もアオジャコウアゲハの擬態をしています。それはアメリカアオイチモンジです。
アメリカアオイチモンジはオスメスともに擬態しています。擬態している亜種は「L. a. astyanax」と呼ばれています。
また、アオジャコウアゲハの分布から外れた地域のアメリカアオイチモンジは擬態していません。これは「L a. arthemis」という亜種に分けられています。
他にもダイアナヒョウモン(学名:Speyeria diana)のメスがアオジャコウアゲハに擬態しています。
チョウだけでなく、プロメテアカイコガ(学名:Callosamia promethea)のオスが擬態するなどガも擬態のモデルとして使用しています。
まとめ
アリストロキア酸は将来の卵、蛹、成虫の蝶に伝えられるため、何世代にもわたって、酸が蓄積するにつれて蝶の体内の酸のレベルが上昇していると考えられています。