ジャコウアゲハ
学名:Byasa alcinous
- 分類:アゲハチョウ科
- 前翅長:4 – 6cm前後
- 時期:4 - 10月
- 分布:東アジア
分類
ジャコウアゲハはアゲハチョウ科に属しており、その中のアゲハチョウ亜科に分けられていてます。
アゲハチョウ亜科のジャコウアゲハ属に分けられています。
ジャコウアゲハ族はケアンズトリバネアゲハ・アオジャコウアゲハなど多数存在します。
生態
春から夏にかけて発生します、1年に3 – 4回発生する多化性です。
生息域
日本、台湾、中国東部、朝鮮半島、ロシア沿海地方など主に東アジアに生息しています。
日本では、本州・四国・九州・南西諸島まで分布し、南西諸島では多くの亜種に分けられています。
川原、荒地、草原、森林の林縁部、渓谷に生息しています。
成虫
ジャコウアゲハは日中に活動し、ツツジ、アザミなど赤い花を好んで吸蜜します。
和名はオスの成虫が腹端から麝香(ジャコウ)のような匂いをさせることに由来します。この匂いの成分はフェニルアセトアルデヒドといわれています。
フェニルアセトアルデヒドは多くの種類の昆虫(チョウ目、ハチ目、甲虫類)が、交信物質として利用しています。
翅を開張すると9 – 10cm前後になる、中型のアゲハチョウです。
幼虫
成熟した幼虫は体色は黒色または黒褐色で、体に白い帯模様があります。体中に太い突起があり、突起の先端は赤色です。
食草はウマノスズクサ、マルバノウマノスズクサなどウマノスズクサ科の植物を食べます。
ウマノスズクサ科の植物は毒性のあるアリストロキア酸を含み、幼虫時代にその葉を食べることによって、体内に毒を蓄えます。この毒は成虫になっても残り続けます。
毒を持つことによって、鳥などの捕食者から身を守っています。
成虫の見た目
ジャコウアゲハは赤色の腹部と長い後翅が特徴的です。
翅の表側の前翅の下地は黒色ですが、うっすらと透けていて黒い翅脈が見えます。翅の表側の後翅の下地は黒色で透けていません。外縁に少しだけ赤い斑点があります。
翅の裏側は前翅は変わりませんが、後翅は外縁に赤い斑点がはっきりとあります。 また、後翅と尾状突起は他のアゲハチョウ科と比べると長めです。
胴体は背側は黒色ですが、腹部は赤色です。
画像の個体はすべてオスで、メスは全体的に明るい褐色です。
お菊虫
ジャコウアゲハの蛹は金色で、その姿が後ろ手に縛られた女性の様に見えます。また、蛹は「お菊虫」と呼ばれることがあります。
これは各地に残る怪談『皿屋敷』の登場人物「お菊」に由来しています。
播州姫路が舞台の『播州皿屋敷実録』の話ではこう書かれています。
姫路城第9代城主小寺則職の代(永正16年1519年以降)、家臣青山鉄山が主家乗っ取りを企てていたが、これを衣笠元信なる忠臣が察知、自分の妾だったお菊という女性を鉄山の家の女中にし、鉄山の計略を探らせた。
そして、元信は、青山が増位山の花見の席で則職を毒殺しようとしていることを突き止め、その花見の席に切り込み、則職を救出、家島に隠れさせ再起を図る。
乗っ取りに失敗した鉄山は家中に密告者がいたとにらみ、家来の町坪弾四郎に調査するように命令した。程なく弾四郎は密告者がお菊であったことを突き止めた。以前からお菊に惚れていた弾四郎はこれを好機としてお菊を脅し、妾になれと言い寄るが、お菊に拒まれる。その態度を逆恨みした弾四郎は、お菊が管理を委任されていた、10枚揃えないと意味のない家宝の毒消しの皿「こもがえの具足皿」のうちの一枚をわざと隠す。そして皿が紛失した責任をお菊に押し付け、ついには責め殺して古井戸に死体を捨てた。
以来その井戸から夜な夜なお菊が皿を数える声が聞こえたという。
やがて衣笠元信達(則職の家臣)によって鉄山一味は討たれ、姫路城は無事、則職の元に返った。その後、則職はお菊の事を聞き、その死を哀れみ、十二所神社の中にお菊を「お菊大明神」として祀ったと言い伝えられている。
その後300年程経って城下に奇妙な形をした虫が大量発生し、人々はお菊が虫になって帰ってきたと言っていたといわれる。
引用元:wikipedia – 皿屋敷
この城下に大量発生した奇妙な虫というのは、ジャコウアゲハの蛹ではないかと考えられています。
暁鐘成『雲錦随筆』では、お菊虫が、「まさしく女が後手にくくりつけられたる形態なり」と形容し、その正体は「蛹(よう)」であるとし、精緻な挿絵もされています。
このことに因み、兵庫県姫路市ではジャコウアゲハを市の蝶に指定しています。
まとめ
ジャコウアゲハは姫路市自然観察の森でネイチャーセンターや園内で飼育してされていて、1年中、成虫や幼虫、さなぎを観察することができます。