カテゴリー: スズメガ科
ホウジャク
ホウジャク

学名:Macroglossum stellatarum
- 分類:スズメガ科
- 前翅長:2 – 3cm前後
- 時期:6 - 11月
- 分布:南ヨーロッパ・北アフリカ・東アジア

分類
ホウジャクはスズメガ科に属しており、その中のホウジャク亜科に分けられていてます。
ホウジャク亜科のホウジャク属に分けられています。
ホウジャク属はスキバホウジャク・ホシホウジャクなど多数存在します。
生態
1年に2回以上発生する多化性です。
生息域
南ヨーロッパ、北アフリカ、東アジアなどの主に温暖な気候の場所に生息しています。東アジアではインド、朝鮮、中国、日本などに生息しています。
日本では北海道・本州・四国・九州・南西諸島など全国的に見られます。
森林、山地、公園、庭、牧草地などに生息しています。


成虫
ホウジャクは日中に活動し、スイカズラ、ベニカノコソウなどの様々な花から吸蜜します。ものすごいスピードで羽ばたきながら、空中でホバリングしたり、急加速して移動したりします。
ホウジャクの口吻は2.5cmほどで、それ以上深い構造をもつ花からは蜜を吸うことができません。
スズメガ科の多くは夜に活動しますが、ホウジャクは昼に活動する蛾です。そのためか、光には惹かれません。
ホウジャクは気温が高くても非常に活発で、45°Cを超える胸部の温度が測定されています。これはスズメガ科で記録された中では最高値であり、昆虫の筋肉活動の限界に近いと言われています。
翅を開張すると4 – 5cm前後になります。

幼虫
成熟した幼虫は体色が緑色で、体の横側の上側に白と黒のラインが走っています。 体の横側の下側は黄色のラインが走っています。
節ごとに黒色の気門が並んでいます。頭部と疣足は緑色です。
腹部の末端にスズメガ科特有の黒い尾角があります。
食草はアカネ、カワラマツバなどのアカネ科の植物を食べます。

成虫の見た目

ホウジャクは薄茶色の前翅とオレンジ色の後翅が特徴です。
薄茶色の前翅には黒い波線があります。オレンジ色の後翅は黒色で縁取りされています。 腹部は非常に幅広くで、白色をしています。


ホウジャク属とオオスカシバ属
同じスズメガ科の仲間であり、似たような外観と行動をするオオスカシバ(学名:Cephonodes hylas)などの、オオスカシバ属(Cephonodes)とホウジャク属(Macroglossum)はよく混同されます。
ホウジャク属の仲間でクロスキバホウジャクはオオスカシバのように翅が透けているなど外見が非常に似ているため、ハチやハチドリと間違われることがあります。


しかし、生態も外見も似ていますが別の属として分かれています。
どちらの属も外見や生態が似ていることは、収斂進化(しゅうれんしんか)によるものと考えられています。
収斂進化とは同じような生活をするものには、同じような形態や生理が要求され、そのため似た姿に進化するという現象のことです。


まとめ
スズメガ科は幼虫がエジプトのスフィンクスに似ていると考えられていたため、学名では「Sphingidae」(スフィンギ)とよばれています。


ベニスズメ
ベニスズメ

学名:Deilephila elpenor
- 分類:スズメガ科
- 前翅長:4cm前後
- 時期:4 - 9月
- 分布:ユーラシア大陸

生態
1年に2回発生する多化性です。
生息域
ヨーロッパ、ロシア、インド、中国、韓国、日本など主にユーラシア大陸に生息しています。
日本では北海道・本州・四国・九州・沖縄など全国的に見られます。
森林、草原、山地、都市、庭園などに生息しています。


成虫
ベニスズメは夕方から夜中に活動し、長い口吻で樹液や様々な花から吸蜜します。
ホバリングしながら蜜を吸います。
スズメガ科の蛾は蛾の中でも飛行速度や飛行力が高いという特徴があります。
日中は薄暗い場所で身を隠しています。 翅を開張すると5.5 – 6.5cm前後になります。

幼虫

成熟した幼虫は体色が茶色がかった灰色で、体に沿って黒い斑点があります。 疣足は体色と同じ色です。
頭部付近に蛇の顔のような眼状紋があり、鳥などの天敵を驚かす効果があると考えられています。
腹部の末端に白い尾角があります。 完全に成長した幼虫は最大で7cmになります。
食草はオオマツヨイグサなどのアカバネ科、ホウセンカなどのツリフネソウ科の植物を食べます。

成虫の見た目


ベニスズメは和名通り、紅色の翅と体色が特徴です。
翅は紅色で翅の内側には茶色が混ざります。昆虫の中では珍しく、紅色の派手な色合いをしています。
胴体は主に紅色で所々に茶色が混ざります。触角と手足は白色です。


スズメガ媒花
ベニスズメの目は非常に敏感で、夜間でも色を区別することができます。そのため、他のほとんどの夜行性種には通常みえない色である色を見ることができます。


まとめ
ベニスズメは同じ名前の鳥がいます。区別するためにベニスズメガとも呼ばれます。
名前を漢字で書くと「紅雀蛾」になります。


オオスカシバ
オオスカシバ

学名:Cephonodes hylas
- 分類:スズメガ科
- 前翅長:3cm前後
- 時期:5 - 9月
- 分布:東・東南アジア

分類
オオスカシバはスズメガ科に属しており、その中のホウジャク亜科に分けられていてます。
ホウジャク亜科のオオスカシバ属に分けられています。
スズメガ科はホウジャク・キョウチクトウスズメなど多数存在します。
生態
夏に発生し、1年に1 – 2回発生を繰り返す、多化性です。
生息域
インド、スリランカ、中国、日本、オーストラリアなど主に東・東南アジアに生息しています。
日本では本州・四国・九州・沖縄など暖かい地域で見られます。
都市部、公園、庭園などに生息しています。


成虫
オオスカシバは日中に活動し、様々な花から吸蜜します。ものすごいスピードで羽ばたきながら、空中でホバリングしたり、急加速して移動したりします。
オオスカシバの口吻は2cmほどで、それ以上深い構造をもつ花からは蜜を吸うことができません。
スズメガ科の多くは夜に活動しますが、オオスカシバは昼に活動する蛾です。そのためか、光には惹かれません。
翅を開張すると5 – 7cm前後になります。

幼虫
成熟した幼虫は体色が明るい緑色または褐色です。
緑色型は節ごとに小さな黒い斑点とオレンジ色の気門が並んでいます。
褐色型は体の横側に黄色と赤茶色のラインが走っており、節ごとにオレンジ色と白色の目玉模様があります。木の枝に似ています。
どちらも共通で腹部の末端に黒い尾角があります。また、胸脚は赤褐色です。
食草はクチナシなどのアカネ科、ツキヌキニンドウなどのスイカズラ科の植物を食べます。
非常に貪欲かつ継続的に食べるため、葉が食べつくされて木が丸坊主になってしまうこともあります。

成虫の見た目


オオスカシバは和名通り、翅が透明で透けているのが特徴です。 翅は透明で鱗粉がなく、黒い翅脈が走っています。
羽化した直後は白色の鱗粉が翅を覆っていますが、羽ばたくと鱗粉がすべて落ちて、透明な翅になります
体の背面はうぐいす色で、腹側は白色です。腹部に赤い帯模様があり、その前後に黒い帯模様もあります。この黒い帯模様の後に黄色の帯模様があります。


ベイツ型擬態
オオスカシバは花から蜜を食べている間空中でホバリングするため、ハチやハチドリと間違われることがあります。
羽音を立てながら飛び、透明な翅と体の模様から大きなハチに間違われることもあります。そのため、大型のハチに擬態しているのではないかといわれています。
毒を持つ生物とは違う種が同じ警戒色を用いて、捕食されないようにする擬態のことを「ベイツ型擬態」といいます。


まとめ
オオスカシバの英名は「coffee bee hawkmoth」(コーヒーハチスズメガ)とユニークな名前で呼ばれています。
これはコーヒーノキがアカネ科の植物で幼虫の食用植物であるからです。


ヨーロッパメンガタスズメ
ヨーロッパメンガタスズメ

学名:Acherontia atropos
- 分類:スズメガ科
- 前翅長:4 – 7cm前後
- 時期:夏もしくは1年中
- 分布:ヨーロッパの南部・アフリカ・イギリス

分類
ヨーロッパメンガタスズメはスズメガ科に属しており、その中のメンガタスズメ属に分けられています。
メンガタスズメ属はヨーロッパメンガタスズメ・クロメンガタスズメ・メンガタスズメの3種類が存在します
生態
成虫は夏に見られ、気象条件が許せば年に数世代を生産する多化性です。
生息域
中東および地中海地域、南端に至るアフリカの大部分、そして最近はイギリス南部にまで発生します。
また、インドからサウジアラビア西部、カナリア諸島とアゾレス諸島から西部まで発生します。
森林地帯や郊外に生息しています。


成虫
ヨーロッパメンガタスズメは夜に活動し、ミツバチの巣を襲撃する蜂蜜泥棒として有名です。
本種は他のスズメガ科よりも口吻の先端が強靭で、かなり固いものにも穴を穿つことができます。
これらを用いてミツバチの巣を襲って巣に穴をあけ、そこから蜂蜜を盗み飲むます。
さらにミツバチの巣に近づけるように、ミツバチのフェロモンを真似た物質を分泌する特技もありますが、巣内に深入りし過ぎて働きバチの逆襲にあい、そのままそこで息絶え亡骸を蜂蜜漬にされることがあります。
また、大型の蛾で開帳すると8 – 12cmになります。


幼虫

幼虫の体色は明るい黄色で青色のラインが節ごとに走っていて、背中はごま模様をしています。
腹部の末端に「尾角」と呼ばれる尾状突起を持っています。黄色の尾角をしています。
幼虫は成長すると約12 – 13cmになります。
食草はナス科・クマツヅラ科・モクセイ科・ノウゼンカズラ科・じゃがいもなど広食性です。

成虫の見た目



メンガタスズメ属の最大の特徴は背面の模様が人の頭蓋骨に見えることです。
翅の地色は茶色・黄色・灰色・クリーム色・青色など様々な色合いがあります。
後翅は黄色で、表面に斜めに伸びる波状の2つの茶色の縞模様があります。休息時には、前翅が下向きに折り畳まれ、前翅の後ろに後翅が隠れます。


鳴く蛾
ヨーロッパメンガタスズメはチョウ目昆虫としては異例な特徴を持っています。
外部の身体部分をこすり合わせることによって音を生成するほとんどの蛾と異なり、幼虫・成虫ともに鳴くことができるということです。
音は空気を吸い込んで吐き出すことによってうまれます。
アコーディオンのように上咽頭を振動させて音を出します。幼虫はピシッという音を出し、成虫は危険を感じるとキイキイと大きな音を出すなど、きしんだ音を出します。
しかし、この音を発する理由は明確ではありません。音が捕食者を阻止するために使われていると考えられています。


まとめ
ヨーロッパメンガタスズメ[Acherontia atropos]は種名と属名の両方とも死に関連する名前から来ています。
種名の「atropos」はギリシャ神話の女神アトロポスから命名されました。アトロポスは運命の三女神・モイラの1柱です。
ギリシャ神話によると、3柱のモイラは人間の運命を決定し、寿命・死・生命などに関連する神です。
属名「Acherontia」は、ギリシャのエピラスにある川アケロンに関連しています。神話では、アケロンは大きくて暗い渓谷が流れていたため、ハデスに至る経路と考えられていました。
上記の生態や頭蓋骨に見える模様から不吉・不幸・死の象徴とされており、多くの迷信があります。


ライムスズメガ
ライムスズメガ

学名:Mimas tiliae
- 分類:スズメガ科
- 前翅長:5 – 7cm前後
- 時期:5 - 6月
- 分布:ヨーロッパ全域など広範囲に分布

生態
成虫は5 – 6月頃まで見られ、気象条件が許せば年に数世代を生産する多化性です。
生息域
ヨーロッパ全域・アジアのヒマラヤ山脈の北・北アフリカ・アラビア半島の北部と中央部・カナダ東部などの北欧/亜寒帯および温帯気候に生息しています。
森林地帯と郊外に生息しています。
イギリスの南半分でかなり一般的な種であり、近年、その分布は北に広がっており、現在では定期的にノースヨークシャー州とその先でよく見られるという。


成虫
ライムスズメガは夜に活動し、光に惹かれます。
口吻自体が退化して摂食せず、幼虫時代に蓄積された栄養だけで活動します。
スズメガの成虫は鋭角を持つ三角形の翅をもち、これをすばやく羽ばたかせて、種類によっては時速50km以上の高速で移動する。
その飛行速度は昆虫の中でも一番速い部類に入る。

幼虫
幼虫の体色は明るい緑色で黄色のストライプ柄をしていて節ごとに赤い斑点があります。
腹部の末端に「尾角」と呼ばれる尾状突起を持っています。水色の尾角をしています。
食草はライムだけでなく、カバノキ、ハンノキ、ニレ、サクラを含む落葉樹の多くの葉を食べます。

成虫の見た目


翅の地色は緑色で中央部分は濃い緑の横柄と茶色がかっている部分が目立つ。
中央の濃い緑の横柄は、個体によってサイズと範囲がまったく異なります。


多くの見た目
ライムスズメガの模様は上記の柄が通常とされていますが、多くの例外があります。
- f. brunnea Bartel 「地色が茶色」
- f. pallida Tutt 「地色が灰色」
- f. lutescens Tutt 「地色が黄色」
- f. virescens Tutt 「地色が緑色」
- f. transversa Tutt 「繋がった中央の濃い緑の横柄」
- f. tiliae 「狭く分離された中央の濃い緑の横柄」
- f. obsoleta Clark 「中央の濃い緑の横柄が完全に無い」
このように地色が茶色・灰色・黄色など様々な色があり、そもそも特徴的である中央の濃い緑の横柄が完全に無いなど多くの柄が確認されています。


まとめ
スズメガ科に属する蛾は世界中に約1450種ほどが知られています。
模様も地味だったり派手だったり多種多様です。今回はヨーロッパのスズメガを紹介しましたが、いずれ日本のスズメガを紹介していきます。

