タイスアゲハ
学名:Zerynthia polyxena
- 分類:アゲハチョウ科
- 前翅長:2 – 3cm前後
- 時期:4 - 6月
- 分布:中央・南ヨーロッパ
分類
タイスアゲハはアゲハチョウ科に属しており、その中のウスバアゲハ亜科に分けられていてます。
ウスバアゲハ亜科のタイスアゲハ属に分けられています。
ウスバアゲハ亜科はアポロウスバシロチョウ・ギフチョウなど多数存在します。
生態
1年を通じて1回発生する一化性です。
生息域
フランス、イタリア、スロバキア、ギリシャなど主に中央・南ヨーロッパに生息しています。
また、カザフスタンやトルコなどにも生息しています。
牧草地、渓谷、湿地に生息しています。
成虫
タイスアゲハは日中に活動し、様々な花から吸蜜します。
オスは自分の縄張りを持ち、縄張りを定期的にパトロールしています。飛翔はゆるやかに飛びます。
夕方になると茂みなどのねぐらに戻り、腹部を曲げて枝に止まり休息します。
翅を開張すると4 – 6cm前後になる、中型の蝶です。
幼虫
成熟した幼虫の体色はベージュ色で、節ごとにオレンジ色の枝分かれした棘があります。このオレンジ色の棘は先端部分が黒色です。疣足はオレンジ色で、気孔は黒色です。
頭部はオレンジ色で、角はありません。
食草は「Aristolochia clematitis」(クレマティティス)などのウマノスズクサ科の植物を食べます。
ウマノスズクサ科の植物は毒性のあるアリストロキア酸を含み、幼虫時代にその葉を食べることによって、体内に毒を蓄えます。この毒は成虫になっても残り続けます。
毒を持つことによって、鳥などの捕食者から身を守っています。
成虫の見た目
タイスアゲハは黄色の翅と翅の縁の黒い縄模様が特徴的です。
翅の表側は黄色で、黒い翅脈が走っています。前翅は黒い斑点と縁に黒い縄模様と複雑な模様をしています。
後翅は前翅と同じく黄色で、黒い斑点と縁に黒い縄模様があります。縁の模様には薄い青色の斑点と赤い斑点があります。この赤と青の斑点は体に毒があることを示す警告色と考えられています。
オスメスともに見た目に大きな違いは特にありませんが、メスは翅がオスより少し長く、オスよりも明るい色といわれています。
タイスアゲハの英名・学名
英名
タイスアゲハの英名の「festoon」(フェストゥーン)とは花、葉、リボンなどを縄状に編んで、花縄の中央部をたるませ、両端を縛った装飾品や文様のことを示します。
主にローマ時代に盛んに用いられ、イタリア・ルネサンス期やバロック期にも多くみられた文様です。
また、懸華装飾、花綱装飾とも呼ばれます。
学名
タイスアゲハの小種名の「polyxena」(ポリュクセネー)とはギリシャ神話に登場する、トロイアの女王です。
ポリュクセネーはホメーロスの最古期の古代ギリシア詩作品『イーリアス』には登場せず、後世の詩人が『イーリアス』にロマンス要素を追加するために登場させた人物といわれてます。
ポリュクセネーの物語は次のようになります。
あるとき、彼女の兄弟トローイロスが20歳になればトロイアは敗れないだろうとの神託が下った。トロイア戦争中、ポリュクセネーとトローイロスが泉から水を汲んでこようとしたときに待ち伏せされ、トローイロスはギリシアの戦士アキレウスに殺された。アキレウスはポリュクセネーの物静かな賢明さに惹かれるようになった。
パトロクロスの死から立ち直りきっていなかったアキレウスはポリュクセネーの言葉に慰められ、彼女がアポローンの神殿で礼拝した後に会うようになった。アキレウスはポリュクセネーを信じきって、彼の唯一の弱点がかかとであることを明かした。
後に、同じアポローンの神殿でポリュクセネーの兄弟であるパリスとデーイポボスがアキレウスを待ち伏せて、そのかかとに毒矢を撃ちこんだ。これにはアポローンの加護があったとされる。
パリスの矢で瀕死の重傷を負ったアキレウスはその後死んでしまいます。アキレウスはポリュクセネーに恋をしていました。
ポリュクセネーの死については諸説あり、アキレウスの死後、責任を感じたポリュクセネーがすぐ自殺したという説と、トロイア戦争終結時に死んだという説があります。
まとめ
ウスバアゲハ亜科の蝶は変わった形、模様をしている蝶が多いです。