ヒトリガ
学名:Arctia caja
- 分類:トモエガ科
- 前翅長:4cm前後
- 時期:7 - 9月
- 分布:ユーラシア大陸・北アメリカ
分類
ヒトリガはトモエガ科に属しており、その中のヒトリガ亜科に分けられていてます。
ヒトリガ亜科のヒトリガ属に分けられています。
ヒトリガ亜科はアメリカシロヒトリ、ハイパーコンプ・スクリボニアなど多数存在します。
生態
1年に1回発生する一化性です。
生息域
ヨーロッパ、北アメリカ、アジアなどの主にユーラシア大陸全土と北アメリカに生息しています。
ヒトリガは幼虫の状態で越冬するため、温暖な季節性のある寒冷気候を好みます。
幼虫は落ち葉の下などで越冬し、翌年の6 – 7月までに蛹化します。成虫は7 – 8月までに羽化します。
日本では北海道・本州などで見られます。
森林、山地、公園、庭、草原などに生息しています。
成虫
ヒトリガは夜間に活動し、様々な花から吸蜜します。
光に惹かれる性質を持ち、光源の周囲を渦を描くように飛びまわる走光性を持ちます。
たき火などの明るさにつられて、最終的に自ら火に飛び込んで焼け死ぬことがあり、和名の「ヒトリガ」(灯取蛾)もこれに由来します。
また自ら進んで災いの中に飛び込んだり、災難を招くことを指す「飛んで火に入る夏の虫」ということわざも、このような習性から生まれたものです。
他の夜行性の昆虫も光に向かって飛ぶ習性を持つため、人間は誘蛾灯などでおびきよせ害虫を駆除していました。
翅を開張すると4.5 – 6.5cm前後になります。
幼虫
成熟した幼虫は赤茶色の長い毛で全身を覆っています。まさに毛虫といった外見をしています。
エサを求めて地上を積極的に移動します。なお移動中、身に危険を感じるとひっくり返って死んだふりをします。
食草は広食性で多種多様な植物を食べます。庭木のキイチゴ、ブラックベリー、スイカズラ、クワなどを食べるため、農家や園芸家から嫌われています。
成虫の見た目
ヒトリガは前翅と後翅の模様が大きく異なることが特徴です。
茶色の前翅には白い縞模様があります。朱色の後翅は黒の大きな斑点があります。
触角は白色で頭部付近は茶色の毛で覆われています。胴体は朱色です。
ヒトリガの毒性
ヒトリガの成虫の後翅は非常に目立つ朱色をしています。
実はこれは毒を持っていることを示す警戒色です。ヒトリガの毒を持つ経緯は次のようになります。
幼虫
幼虫は毒であるピロリジジンアルカロイドを含んだ植物を優先的に食べます。しかし、幼虫は広食性でさまざまな植物から毒性化合物を取り込んでいます。
見た目が毒々しい毛虫そのものの幼虫ですが、実際に毛に毒はないといわれています。しかし、食草に含まれたアルカロイドなどの毒を体内に含有しているので、鳥のように摂食する分には有毒です。
また、幼虫の毛がアレルゲンとなり発疹や炎症などを引き起こすことがあります。
同じヒトリガ科の幼虫の中には、毛が有毒の毒針毛があるため、毛虫を素手で触れるのは危険です。
成虫
幼虫のころに蓄えた毒は成虫になっても体液などに残ったままです。翅の目立つ色と模様は捕食者への警告色として役立ちます。
ヒトリガの毒性についてはまだ解明されていませんが、アセチルコリン受容体を妨害することによって作用する神経毒作用を示すコリンエステルであると考えられています。
ヒトリガの成虫は危険を感じたらすばやく後翅の警告色を示して飛びます。
また、コリンエステルを噴霧することもあるそうです。
まとめ
ヒトリガは翅を使って音を出すことができ、人間に聞こえる高音のきしむ音を発することができます。
ヒトリガの音によりコウモリは有害な蛾を回避するため、これらの音はコウモリの行動に影響を与えることがわかっています。