シンジュサン
学名:Samia cynthia pryeri
- 分類:ヤママユガ科
- 前翅長:6 – 7cm前後
- 時期:5 - 9月
- 分布:中国、朝鮮半島、日本
生態
時期は5 – 9月と年に2回発生する多化性です。
生息域
日本では北海道・本州・四国・九州・沖縄・南西諸島など全国的に生息しています。
中国、朝鮮半島、日本にかけて分布し、いくつかの亜種に分けられています。
森林と郊外などで見られます。
成虫
シンジュサンは大型の蛾で、翅を開帳すると11 – 14cmになります。
シンジュサンは夜に活動し、光に惹かれます。口吻自体が退化して摂食せず、幼虫時代に蓄積された栄養だけで活動します。
日本では古くから「ミツキムシ」と呼ばれていました。名称のシンジュとは「神樹」と書き、これはニガキ科の落葉高木、ニワウルシの別名です。
シンジュは明治時代に初めて輸入されたため、「シンジュサン」は比較的新しい呼び方です。
幼虫
幼虫の体色は白っぽい緑色で頭部と尾部は黄色です。節ごとに小さな黒い斑点と水色の突起が出ています。
幼虫は成長すると約6cmになります。
食草はニワウルシ(シンジュ)・柑橘類・ニガキ・ヌルデ・クヌギ・フカノキなど広食性です。
成虫の見た目
翅の地色は褐色で内側の線は白色です。
前翅の先端が鎌状に曲がっていて目玉模様があります。触角は櫛歯状をしています。
全ての翅に1つずつ三日月の模様があるのが特徴的です。
エリ蚕
シンジュサンはカイコ(蚕)を飼ってその繭から生糸(絹)を作る産業である、養蚕業に使用されている蛾です。エリ蚕(ヒマサ蚕)と呼ばれています。
インドとタイにはトウゴマの葉を食べる亜種、エリサン[S. cynthia ricini]がおり、「エリ・シルク」の生産で知られてます。
このエリサンとシンジュサンの交配種から絹糸が生産されています。
エリ蚕は野蚕です。野蚕とは絹糸を生成する野生の昆虫のうち人間が利用してきたものの総称です。野蚕からとった絹糸を「ワイルドシルク」と呼びます。
主な産地はインド北部・タイ・ベトナム・中国南部です。繭の色は白色または赤茶色をしています。絹は非常に耐久性がありますが、簡単に巻き取ることができないため、綿や羊毛のように紡がれます。
主にマフラー、綿との混紡用品に利用されます。
まとめ
小学生のころに道端でシンジュサンが地面で休んでいるのを見たのが最初の出会いでした。最初は鳥かと思ったんですが、よく見ると大きい蛾でだいぶ衝撃的でした。私が近づくとバタバタと羽ばたいて飛んで行ってしまいました。
今になって改めて調べると上記のような生態や人との関わりを知って、実際に見ることが出来て良かったなと思いました。
野蚕は日本野蚕学会が活動しているほか、東京・深川にワイルドシルクミュージアムという私設博物館があるなど多くの人々から重宝されている産業です。